タイ人のニックネームは奥が深い!
私たち日本人が【ニックネーム】と聞くと、学校で友達と呼び合う時に使うイメージがある。
しかしタイでは、子供が生まれた時、親が我が子に【一生使うニックネーム】を与える。
これから始まる長い人生、親や友達、はたまた上司から、そのニックネームで呼ばれることになる。タイ人の生活では、本名より断然ニックネームの方をよく使う。
では、タイ人の両親は子供に、どうやって一生を左右するニックネームをつけるのか?
毎年、興味深いニックネームのオンパレード
毎年、高校の日本語学科には、約45人の新入生が入って来る。
私たち教師の最初の大仕事、それは、生徒全員の本名とにニックネームを両方覚えること。
例えば、本名が「チュティモンちゃん」、ニックネームは「ミントちゃん」。
本名とニックネームの関連性はゼロなので、何度も呼んで覚えるしかない。
生徒を呼ぶときはニックネームなのだが、成績入力などは本名でしなければならないので、顔、本名、ニックネームが一致するまでに約1か月はかかる。
中には、運が悪いだのなんだの言いだし、いきなり改名する子もいて、わけがわからなくなる。というか、アッサリ改名できることに毎回びっくりする。
月曜の朝にいきなり、「先生、私の名前もうジャリワンじゃないから。昨日からプーリッチャヤーだから。」と言われ、思わず改名理由を聞くと、「うち貧乏だし、去年事故にあったから、運気を上げるために改名したの。」と。
タイの中高生は、制服の胸元に本名を刺繍しているので、これを変えるのがちょっとめんどうなんだよなー、と、ジャリワンちゃん改めプーリッチャヤーちゃんは笑っていた。
では、タイでは一体どんなニックネームが浸透しているのか見てみよう。
女の子のニックネームはスイーツ系が根強い人気
かわいらしい響きのスイーツ系ニックネームは一クラスに3人はいる。
「クッキーちゃん」や「パンケーキちゃん」、「ドーナツちゃん」に「カップケーキちゃん」など、とってもかわいいニックネーム。
みんな自分のニックネームを気に入っているので、例えば「ドーナツちゃん」なら、テストの名前記入欄に、本名の横にドーナツの絵をちょこっと描いたりしていて、それがまたかわいい。
「クリームちゃん」は一時本当によく見るニックネームだったが、最近はあまり見なくなった。
「クリーム」は女の子によく見られる名前だが、教え子の中で過去に一人だけ、「クリーム君」がいた。シャイでフワッとしたかんじの男の子だったが、今は軍人になって、タイとミャンマーの国境でがんばっているらしい。
母親が妊娠中に好きだった食べ物の名前を「そのまんま」つける
料理名や、食材の名前が入ったニックネームもけっこう多い。
たとえば、「ムーデーンちゃん(タイ風焼き豚)」、「ホーイコム君(タニシ)」、「フレンチフライちゃん」、「ピザちゃん」など、生徒に聞くとみんな口を揃えて言うのが、「私がおなかの中にいた時、お母さんがハマっていた食べ物」。
これに加えてシーフード系ニックネームも充実していて、「プーちゃん(カニ)」、「クンちゃん(エビ)」、「プラーちゃん(魚)」など、シーフード系は女の子のニックネームによく使われている。
日本を意識したニックネームも増えている
コロナが流行る前は、訪日タイ人観光客は年々うなぎ上りで、私の周りにも日本へ行ったことがあるタイ人がたくさんいる。
嬉しいことに、タイ人は親日家が多く、日本に魅せられた両親が我が子に、日本に関連したニックネームをつけるのも珍しくない。
「ジャパン君」、「スシ君」、「ショウグン君」をはじめ、「メイジちゃん(明治製菓からインスパイア)」、「モチちゃん」、「ユウコちゃん(生粋のタイ人だが敢えての日本名)」など。アニメからそのまま取った「ジャイアン君」や「イッキュウ君」もいる。
繰り返す音の名前もジワジワ人気
近年増えているのが、同じ音を2回繰り返すニックネーム。
「ベイベイちゃん」、「アムアムちゃん」、「パンパン君」、「バムバムちゃん」、「イムイムちゃん」など。生徒に、「なんでベイちゃんじゃなくて、ベイベイちゃんなの?」と聞いたところ、「先生。先生はおなかが空いた時、おなかがぺこぺこですって言うでしょう?おなかがぺこですって言わないよね。そういうことだよ。2回言うのが正解なんだよ。」と一瞬で論破されてしまった。
双子なら、ニックネームにとんちを効かせるのが一般的
タイは双子が多い気がする。ほぼ毎年、クラスに双子がいて、ニックネームもひねりがあって面白い。
例えば、「ヌンちゃん(1)」と「ソーンちゃん(2)」、「ジェーム君」と「ジョーム君」、「オンちゃん(ON)」と「オフ君(OFF)」など。
兄弟のニックネームの頭文字を揃えることもよくある。
以前、4人兄弟の生徒がいて、末っ子を除いて全員「J」から始まるニックネームだった。
「ジャムちゃん」、「ジューンちゃん」、「ジェニーちゃん」、だけど末っ子は「ベンツ君」。
なぜ末っ子だけ「J」から始まらないのか聞くと、「もしJから始まる名前だと、また下に兄弟ができてしまうかもしれないから、両親が全く違う名前にしようって決めて、お父さんが車好きだから、ニックネームをベンツにしたの」と。
確かに、お父さんが待望の息子に張り切ってつけたニックネームは、乗り物系が多い。今までに「ヘリコプター君」や「エアバス君」にも会ったことがある。
不動の人気、タイ語のニックネームは?
ここまでで紹介したファンキーなニックネームは印象的だが、でもやっぱり一番多いのはタイ語のニックネームだ。
女の子だと、
「プローイちゃん(宝石)」、「バイトゥーイちゃん(タイ料理やお菓子に欠かせない香り豊かな葉っぱの一種)」、「メーちゃん(5月)」、「ルンちゃん(虹)」、「ナムターンちゃん(砂糖)」、「ソムちゃん(みかん)」、「ウポーちゃん(オパール)」、「ケームちゃん(ほっぺ)」、「ゴイちゃん(小指)」、「ムックちゃん(真珠)」など。
男の子は、ザ・タイ語!のニックネームはあまりなく、英単語がよく使われている。
「アーム君」、「インク君」、「バンク君」、「ボーイ君」、「チーム君」、「ボート君」「ボス君」、「トップ君」、「ピンポン君」あたりがよく聞くニックネームだ。
私が一番驚いたニックネームとは
毎日たくさんのタイ人の子供たちと接する中で、驚いたニックネームが二つある。
一人目は「アイフォーン君」。まだアイフォーンが発売されて間もないころに生まれた生徒の弟の名前だ。
そして二人目は「ジェームズボンド君」。友達からは「007」と呼ばれていた。
タイ人のお父さんお母さんが我が子につけたニックネームにはいろいろな意味が込められれていて、「どうしてこのニックネームなの?」と聞くと、みんな嬉しそうに理由や経緯を教えてくれる。
もしみなさんの周りにタイ人がいたら、ぜひニックネームの由来を聞いてみてください。そこからおもしろいお国違いや、その人の背景が見えてきて、もっと仲良くなれるかもo(^o^)o